低身長の原因を分類してみると下の表のようになるのですが、数のうえではほとんどが1.の病的でない低身長です。このうち、親が小さいから子供も小さいということは遺伝子レベルで決まることでもありますので、何とも仕方がないことといえます。成長曲線にプロットしていくと成長曲線の下方のライン
に沿っている場合がほとんどです。
思春期には成長曲線のラインから大きくはずれていますが、最終的にはかなり追いついています。このように思春期が遅い場合は思春期には差が大きく開くのですが、最終的には追いつくことが少なくありません。なお、思春期が遅い場合、両親またはどちらかの親も思春期が遅かったという場合が少なくありません。
逆に病的なほどではないけれど、思春期が少し早いという場合は、他の人より早くクンダン背が伸びるのですが、早くに伸びが止まるために結果として低身長に終わる傾向があります。
身長が伸びるということは骨が縦に長くなることです。では骨はどうして伸びるかというと、骨の先にある軟骨が骨に置き換わるためです。これを専門用語では軟骨内骨化といいます。
ですから、骨や軟骨そのものに異常があれば伸びが悪いということになります。軟骨無形成症や染色体異常などがこれに当たります。染色体というものはいわば体の設計図ですから、ここに異常があれば、骨や軟骨の設計図もおかしいわけです。
賢不全や心不全など重い病気があれば骨・軟骨の働きが悪くなるので、その結果として低身長になります。低栄養である場合も同様の理由で低身長になります。
成長ホルモンや甲状腺ホルモンなどのホルモンは、骨を縦方向に伸ばすことに関与しているので、これらが不足すると骨が伸びきらずに低身長になるということです。
生まれたときから低身長で、だんだん低身長の度合いがきつくなる場合と、ある時期以降に成長率が低下して、その結果として低身長になる場合とがあります。
生まれたときから低身長でだんだん正常な線から離れていくものは、染色体異常、軟骨無形成症などの骨系統の疾患、先天異常によるものなどです。また、低出生体重児(未熟児)で生まれた場合、生後半年くらいで平均に追いつくこと(キャッチアップ)が多いのですが、6か月以内にキャッチアップできない場合は小柄に終わりがちなのです。
それに対して、後天的に低身長になっていくものには、甲状腺ホルモン異常、脳腫瘍、愛情遮断症候群があり、これらはこうした病気が発症したあとに初めて低身長が目立ちます。また、生後から成長ホルモンの欠損があれば生まれたときから低身長ではないかと考えられがちですが、どんなに欠損
の程度が重症でも生後半年以降、多くの場合は2~3歳以降にようやくはっきりしてきます。
成長ホルモンの出が悪いということは、下垂体など成長ホルモンの分泌に関与する場所に何らかのトラブルが生じたということです。
ひとつは周産期のトラブルです。さかごで生まれたり、仮死で生まれたことが原因になり、成長ホルモン欠損が生じることが知られています。この場合、黄疸が強かったり、低血糖を起こしたりすることが多いといわれています。これらに心当たりのある人は、医師にフォローしてもらうと同時に、成長曲線をつけるなど身長にぜひ注目してください。
もうひとつは後天的な下垂体周辺のトラブルです。脳腫瘍が代表的なものです。この場合は急に成長率が下がることが発見の手がかりとなります。早期発見のために病的な低身長は、その病気自体を治療するためにも早期発見が欠かせないのですが、そのチェックポイントは次の3つです。
第一に身長の絶対値よりも成長率が大切です。身長がそれほど低くなくても伸びが急に悪くなるというのは注意してください。たとえば小学4年生でクラスの真ん中、5年生で前から3番め、6年生でいちばん前などというのは絶対気づいてほしいケース。脳腫瘍など後天的なトラブルの可能性が考えられます。
その他、急激に伸びが悪くなる病的な低身長の中には、生まれつきの成長ホルモン分泌不全性低身長症があります。生後6か月くらいから成長率が落ち、曲線が真横に寝てしまいましたが、1歳9か月くらいから治療を受けて4歳前に元のラインに戻っています。この症例では、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌も障害されていたために、甲状腺ホルモンの治療も同時に行いました。早期発見には成長率がいちばんのポイントだということがこの例からも明らかです。
次は絶対値。マイナスパーSD以下であれば、やはり検査は必要です。低身長のうちマイナス2SD以下が検査の対象とよくいわれますが、実際には成長率がよい場合には)、マイナス2~2.5SDの間の身長で、病的なものが見つかることはまれです。
3番めは両親からの予測身長のSD値から大きく離れているかです。両親の身長は子どもに受けつがれますので、これからかなりはずれるという場合
は、病気がある可能性が高いといえます。
以上3点をきちんと踏まえれば、病的な低身長が見逃されることはまずほとんどないといえます。