成長ホルモンは高価な薬で、薬代だけで年間数百万円もかかります。それが何年にも及ぶので、ひとりにかかる費用は莫大です。
しかし、治療が認められた場合、一定の条件を満たせば、これがすべて公費でまかなわれます。一般的には70%は健康保険が負担し、約3~5万円は小児慢性特定疾患研究事業という制度で半分ずつ国と都道府県で分担します。そしてその残りは高額医療費という枠で健康保険組合が負担します。
ただし、平成12年現在は、成長ホルモン分泌不全性低身長症の場合、年問3cm以上の伸びがない場合や、男子で156.4cm、女子で145.4cmを超えた場合、この小児慢性特定疾患による公費の補助は打ち切られます。
小さいときは親が、大きくなったら親または本人が毎日注射をします。病院に行かずに医師でない者が注射できるのは、インシュリンと同じように自己注射が認められているからです。成長ホルモンに飲み薬はありません。飲むと消化されてしまうので、効き目がないからです。
大きく分けると2種類あります。
ビンにはいったフリーズドライの粉末薬剤を溶かし、注射器に吸って使用します。注射薬は1か月分ずつ渡されるのでかなりの量になるのですが、このタイプだと保管(冷蔵庫での保管が必要)に場所をとらない利点はありますが、作る手間がかかることと、不潔になりやすいなどの欠点があります。
ベン型の注射器に薬剤を詰め替えるタイプ。ペン型はワンタッチで注射できるので打つのに楽です。
また、薬剤はカートリッジ人りなので清潔が保たれるうえ、容量設定が容易。交換すると数回使えるので手間も省けます。
その他、針なし注射器、使い切り注射器などもあります。
お尻(符部)、太もも(大腿部)、二の腕(上腕部)、おなか(腹壁)などです。
同じ場所ばかりに打つと、その場所の脂肪が萎縮してへこんでしまうので、打った場所は毎日カレンダーに書き込み、打つ場所が重ならないようにします。
注射の針がかなり細いので、全然とはいいませんが、あまり痛くありません。事実、痛がって、いやかって、どうしても続けることができなかったという方はほとんどないと思います。
こわがるのでぐっすり寝てから打ちたいという人もいるでしょうが、これには賛成しかねます。本来は打ってほしい人に打つものですから、そのあたりの自覚ももたせていきたいものです。
1回に渡される薬は1か月分ですから、毎月薬を取りに来てもらいます。これは本人でなくてもよいのですが、本人の定期検診も必要です。身長を伸ばす治療をしているのですから成長の状態をみる必要はありますし、副作用のチェックも欠かせないからです。原則として月1回は本人が受診して身長の計測などをしてください。学校がどうしても休みにくい場合でも、治療開始後も1年間は1~2か月に一度。翌年からは少なくとも2~3か月に一度は本人が来てください。
「学校があるから外来には行かれない」と親ごさんばかりが薬を取りに来られる場合があります。そのようなときには「そんなに学校が大切なら、もう来なくていいよ」といいたいところです。本当に本人が治療を受けたいのなら、ちゃんと受診すべきでしょう。親が先回りして子どもの都合ばかりを考えてやると、本人はこれを自分のことととらえられず、何か不都合が出るとお母さんのせいにするなど自覚がないまま大きくなっていってしまいがちだからです。
成長ホルモン不足で背の伸びが悪い場合、成長ホルモンを補って成長ホルモンの量を普通にすると、それまで悪かった伸びが普通になるはずです。従って身長については、それ以上平均との差は広がらないのですが、狭まりもしないということです。
ただし、成長ホルモンを打ち始めた1~2年は、いままでの分を取り戻すかのようにぐんぐん伸びます(キャッチアップ)。特に成長ホルモン不足が重症なほど伸びます。
遂に不足が軽度だと期待したほどではない場合がほとんどです。
そして、その後は次第に伸びが落ちて普通の伸びになっていきます。
一般的に成長ホルモン治療は打てばすぐ伸びる、すぐ普通の身長なるという打ち出の小槌であるかのように錯覚されているようです。そのような「ぐんぐん伸びる神話」が気持ちの中にあるために伸びが鈍ったときには何かの間違いではないか、まだほかに手があるのではないかと不安に思われる傾向があるのですが、成長ホルモン治療は打ち出の小槌ではないのです。
専門医が治療した最近の報告では、成長ホルモン治療した男子の平均身長は162.7cm、女子の平均身長は151.1cmです。性腺刺激ホルモンも不足していて性腺ホルモン治療も併用した場合では、男子が167.4cm、女子が154.3cmが平均値です。一般医を含めた多数例の報告では、これより約3cmくらい低いようです。
平均値ですから、当然これ以下の人もいます。「長い間治療してもこれだけか」というのが本音かもしれませんが、これが現実です。治療すれば少なくとも平均身長になれると考えられがちですが、マイナス2SDにいけば「ああよかった」なのです。