甲状腺はのどのあたりにある臓器で、ここから甲状腺ホルモンが分泌されています。
甲状腺ホルモンは心身ともにいきいきさせるホルモンですから、これが不足すると、気力がなくなったり、疲れやすくなったりします。
身長とも大いに関係があり、このホルモンの不足で低身長になる場合もあります。
生まれつきではなく、出生後、遅れて発症することを後天性といいますが、いちばん多いのは橋本病と呼ばれる慢性甲状腺炎。次いで多いのが萎縮性甲状腺炎です。
成長期にこれらの病気になると、身長の伸びが悪くなり、ときには伸びが全く止まったようになります。ある時点でまるで成長が止まったように、プロット
した点が横に並んでいます。
実はこの例は学校の養護保健の先生によって見つけられ、私のところに紹介されてきた子どものものです。成長曲線をつけてみておかしいと感じて病院へ行くことをすすめたということですが、もし養護保健の先生が成長曲線を作ってくれていなければ発見はかなり遅れたものと思われます。
この意味からも養護保健の先生にこの本を読んでいただきたいと思いますし、身長、体重を測るだけに終わらず、成長曲線も作っていただけたら、見落としはもっともっと減るのではないかと思うのです。後天性のものは、ときに発見が遅れることがあるのです。
ある子が来院したのは7歳5か月でしたが、6歳9か月ごろから疲れやすく、友達と同じペースで行動がとれなくなったといっています。体育の時間にも以前にできたことができないなど、能力の低下がみられ、すごく寒がるようにもなっていたようです。
甲状腺ホルモンは体をいきいきさせる働きがあるのですから、それが不足すれば何らかの症状が出るのですが、疲れやすいな程度で大きい病気を考えない場合が多いのではないでしょうか。もし養護の先生が早期に発見していなかったら、この子はかなりの低身長になっていたかもしれません。発見
後の治療で伸び出し、15歳では160mを超えています。
成長ホルモンが不足している、成長ホルモン分泌不全性低身長症の子どもの中には甲状腺ホルモンも不足している場合があります。また、成長ホルモン治療をしていて代謝が進むために甲状腺ホルモンがより多く必要で、そのために不足する場合もあります。
甲状腺ホルモンが不足している場合に用いる甲状腺ホルモンの薬は、注射ではなく飲み薬になります。
先天的なものは甲状腺そのものの形成異常とか、甲状腺ホルモンがうまく合成できない異常などで起こります。
先天的なものが放置されたとしたら、低身長のみならず、重度の知的障害などが起こる可能性もあります。そのため、現在では生まれた子のすべてに甲状腺ホルモンの欠乏はないか、のマススクリーニングが行われていることはご存じのとおりです。マススクリーニングで見落とされることは極めてまれですので、現在では個人的に先天性の甲状腺ホルモン不足を心配することはありません。
虐待など心理的な問題でも低身長になることがあります。医学的にはこれらをまとめて愛情遮断症候群といいます。
成長率が極度に悪いことから7歳半で診察を受け指導を受けて改善されたものの、10歳ではまた成長率が悪くなったことから、14歳まで施設で保護されたケースです。成長曲線はそのあたりを顕著に表しています。
このところ親による子の虐待が増えているといわれているだけに、虐待からの低身長は今後のひとつの課題です。また、明らかな肉体的虐待がなくとも、子どもがゆったり発育できる心理環境にないと、成長障害が起きることもあるのです。