簡単にいえば成長ホルモンの出方が不足しているために低身長になる病気です。「低身長には原因があり、だから治療できるのではないか」と一般の方が考えたとき、たぶん、疑っている病気はこれでしょう。
なお、成長ホルモン分泌不全性低身長症のほかに、下垂体性小人症、成長ホルモン欠損症、成長ホルモン分泌不全症などと呼ばれることもあります。
成長ホルモンの出方が不足しているといってもその程度はさまざまで、重症、中等症と分けることもあります。
この病気の原因を大きく分けると、①基礎疾患のないもの、②基礎疾患のあるものに分けられます。他の病気でも原囚不明のものは特発性と呼ばれますが、低身長の場合も同じで、①のようななぜ起こったかはっきりしないものは特発性と呼ばれます。
これに対して基礎疾患のあるものは器質性と呼ぶのですが、これをさらに分類すると、先天的なものと後天的なものに分けられます。
先天的というのは、生まれたときにはすでにその疾患をもっているというものですが、口蓋・口唇裂など正中線(体の真ん中)上に奇形のある場合、全前脳症がある場合、そして下垂体が形成されていない(下垂体無形成)とか、下垂体が小さい(下垂体低形成)などがあります。
後天的なものの代表は脳腫瘍ですが、その他、大量に放射線照射された場合、外傷を受けた場合、何らかの炎症を起こした場合などがあります。
なお、さかごで生まれた、仮死で生まれたなどで低身長である場合は、成長ホルモン分泌不全性低身長症の可能性が大きいのですが、以前はこれらは特発性と考えられていました。しかし、MRI(核磁気共鳴画像)で見るとこれらの子どもの70~80%に下垂体茎が見えないことから、さかごや仮死
があると分娩時に外傷や無酸素などで下垂体に断裂が起こることがあるのではないかと考えられるようになりました。
成長ホルモンの分泌と働きを示したものです。成長ホルモンというと下垂体のみに関係があるように感じられるかもしれませんが、実はまず視床下部よりさらに上の中枢から視床下部に刺激が加わり、視床下部からは下垂体での成長ホルモン分泌を刺激する働きのあるGRFが下垂体を刺激し、そこで下垂体から初めて成長ホルモン(GH)が出ます。ここまでのいずれかの場所がうまく働かなければ、成長ホルモン分泌は不足するのです。
さらに成長ホルモンが直接、または肝臓が働いて作るソマトメジンC(IGF-I)が軟骨や骨に働いて初めて成長が生じるのです。このような長い道のりですから、その中のどこに障害が出ても、結果として成長ホルモン分泌不全性低身長症と同じような成長障害が起こります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断された男の子の成長曲線と成長率ですが、低身長の程度や成長率、その他の状態から、この病気が疑われるときは検査・治療となります。まず検査で病名が確定し、治療が始められるはずです。
脳腫瘍のために低身長になった女の子のものです。7~8歳までは平均身長できているのに、11歳ですでにマイナス2SDを下回っています。女の子であればい11歳はぐんと伸びるときなのに、成長率も悪く、成長のスパートがないために曲線上にピークがありません。
脳腫瘍というと一般的には、頭が痛いなどの症状で発見できるのではないかと思われがちですが、低身長が主な訴えになることもあるのです。ここでも成長曲線にプロットすることの大切さがわかります。